廻る夜 ——— 2・露呈
城のどこかで、男たちの酒宴があった翌日。
てきめんに二日酔いのヤールはもとより、その部下までもが寝不足のような気だるい目をしていたので、いつものように要らぬ憶測を呼んでいた。
とにかく頭が痛い。朝、トゲのある態度で起こされてからというもの、あからさまにネリスが冷たい。
何か記憶にない醜態をさらしたか、と素直に謝ってみても、まともに取り合ってもらえなかった。
(クソみてぇな気分だ……)
過ぎた飲酒のツケを払いながら、まだらな記憶を繋ぎ合わせようとするが、何一つ鮮明な像を結ばない。
(そういえば…………)
部屋に帰り着いて、その後ネリスと会話した気がする。気はするが、はたして何を言ったのか、またはしたのか……肝心な部分は頭痛の彼方だった。
ただ、そばで見たネリスの顔だけが、ぼんやりと思い出された。
「はぁー………………」
出てくるのは溜め息ばかりだった。
「……おまえ、酒が抜けるの速いな……」
畑の淵に座り込み、土を運ぶゲッシュを見ながらヤールが呻く。ひたすら横になっていたいが、ネリスの目が怖いので、せめて何かしらの労働をすべくやって来たのだった。
「潰れてたくせに……」
「ほっとかれたから、体痛かったっすよ!」
誰がおまえみたいなデカいのを運べるんだよ、と答えながら、またうなだれる。
「…………ヤールさん」
「ん?」
作業の手を止めてゲッシュが尋ねる。
「なんか……ネリスさんとあったんすか?」
「…………何かってなんだよ」
更に不機嫌そうな声と悪相になるヤールに、ゲッシュが続ける。
「や、だって……ネリスさんも調子悪そうだし…………きのう、」
「昨日?」
ヤールの眉が急に上がる。
「ネリスさんの話になったとき…………手を出せない美人なんかつまんねえ、って散々キレてたから」
「もしかしたら出しちゃったんじゃないかとか……違っ、俺じゃない、言ったのは俺じゃないっす!」
ヤールがまさに鬼の形相で睨むので、ゲッシュが慌てて弁明する。問い詰められるのを覚悟したが、ヤールがみるみる消沈して押し黙る。
「…………出して、ない。履いてた。」
「それは……良かった?っス…………」
うなだれきったヤールのトサカまでが、力なくしおれて見えた。